分数ができない大学生
岡部恒治・戸瀬信之・西村和雄編 東洋経済新報社(1999年6月)1600円(302ページ)

徐 丙鉄(近畿大学工学部)99.9.14

 タイトルをみて買ったが得るところが多い本だった. 例えば2章の「創造性論議の落とし穴」唐木田健一(富士ゼロックス)は面白い.

 「相対主義の本来の意味は,絶対的な基準を認めないことにあろう. しかし,現在蔓延中の相対主義は,さらに進んで,絶対的な価値基準が存在しないのだから, あらゆる価値は等価である―――あるいは等価であるとみなすべきである―――と主張する. ここでは,偉大なものも凡庸なものも等価に扱われる」と指摘する. 確かに現在日本の風潮はそのような傾向がある. そのような認識の社会では向上を目指して努力することが行なわれなくなるのではと心配される.

 また,唐木田の「半通約不可能性」も科学理論の発展を的確に表現する用語だ. 古い理論から新しい理論へは断絶があるが,新しい理論から古い理論は理解できる, このような関係を「半通約不可能性」という. 通約不可能な例としては,西洋医学と中国医学(東洋医学)がしばしばあげられる. これらは現在通約不可能である. しかし,新旧物理理論は唐木田の指摘するように半通約不可能である.

 みなさんは「チェンジニア」,「テレフォニア」とは何か,想像できるだろうか?

機器にトラブルが発生したときに原因が究明できないために, 故障していると考えられる基盤をごっそり換えるだけのエンジニアをチェンジニアといい, そもそもどこが故障しているか究明できないため, 専門メーカーにいつも電話するエンジニアをテレフォニアというそうだ. (中馬宏之:一橋大学)

これは的確なネーミングだ. 確かに現在の多くのエンジニアはチェンジニアであり,テレフォニアである. このようなエンジニアに創造性を期待できるだろうか?

その他,書名通りの内容もある. 特に小中学校で学んでいるはずの数学の学力調査結果は興味深い. 問題を以下に示す. 中間レベルの私大文系の大学生の平均点が14点(25点満点)という状況である. 理系においても高校数学の内容を含めると同様な状況であろう. 出来てもらわねば話にならない基礎問題ができないのが今の大学生である. 心して対処せねば将来恐ろしい状況になる.


数学力調査問題


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